「カット野菜に栄養がない」は本当? 科学的データで確認してみた
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「カット野菜は殺菌剤の使用や洗浄によって、野菜のビタミンが流れ出るから栄養はほとんど無い」という話は良く聞きます。
フードプロデューサーの南清貴さんが、著書『じつは体に悪い19の食習慣』で取り上げ、ネットでも話題になりました。
本当にカット野菜は栄養がほとんど残っていないのでしょうか?
イメージではなく、科学的なデータを参考に調べてみました。
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野菜に含まれるビタミンの種類
野菜にはビタミンが多く含まれています。
ビタミンは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2種類あります。
脂溶性ビタミンは油に溶けやすく熱に強い性質があり、ビタミンA、D、E、Kの4つが分類されます。
水溶性ビタミンは水に溶けやすく熱に弱い性質で、ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン)とビタミンCの9種類あります。
カット野菜として使われることが多いキャベツの場合、ビタミンK、葉酸、ビタミンC、カリウム、食物繊維が多く含まれています。
それではキャベツの「水に溶けやすく、熱に弱い」ビタミンはどれぐらい減るのでしょうか?
日本食品標準成分表を見てみましょう。
カット野菜ではないキャベツでも、ゆでることによって、水溶性ビタミンの葉酸やビタミンCの値は大きく減少しています。葉酸は約38%、ビタミンCは約58%減る計算です。
「カット野菜には栄養がない」はデマ!
殺菌剤の使用によって栄養価はどれだけ下がるのでしょうか。
茨城県工業技術センター研究報告によると、カットだけの無処理キャベツと10分間、次亜塩素酸ソーダ水溶液(殺菌剤)に浸けて殺菌処理を行なったキャベツでは、ビタミンCは約30%減少しました。
ビタミンCを例にしても「栄養が全く残らない」とは言えません。
また日本調理科学会平成 21 年度大会で、キユーピー㈱研究所が提出した「カットレタスの洗浄方法の違いが栄養成分に及ぼす影響について」という資料があります。
その調査結果には「調製したカットレタスの栄養成分データについて比較した結果、いずれの栄養成分においても各調製試料間に有意な差は確認されなかった。以上の結果より、洗浄方法の違いによってカットレタスのビタミン C 及びミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)に有意な損失はないことが示唆された。」とあります。
つまり、水道水の洗浄と次亜塩素酸ナトリウムを使った洗浄殺菌処理では、ビタミンの差はなかったのです。
水溶性ビタミンのビタミンCでも、水による減少は少なく、むしろゆでた方が減量率が高いことが分かります。
そのことからも「カット野菜は洗浄・殺菌によってビタミンはほとんど残っていない」は、デマだと言えます。
カット野菜を食べて手軽に栄養を取ろう
確かにカット野菜は丸ごと野菜に比べて、栄養価は劣ります。
しかしながら、カット野菜のビタミン流出量は、台所で野菜を切って洗った時と、ほとんど違いがありません。
複数の調査結果から考えても「カット野菜には栄養がほとんど無い」はデマだと明言できます。
カット野菜のメリットは、栄養価ではなく「手軽に野菜が食べられる」ことにあります。
一日のビタミン摂取の推奨量は、ビタミンCの場合100mgです。
カット野菜のキャベツ100gに含まれるビタミンC量は40mg程度なので、カット野菜を使うことで一日の半分程の栄養を摂取できます。
ただしビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いので、油で炒めたり蒸したりする調理方法が望ましいです。
「野菜を切るのは面倒だから、野菜なしで良いや」と考えて、野菜を取らないよりも「カット野菜を使って蒸し野菜でも作って食べるか」と料理をする方が、ずいぶん健康的です。
野菜に含まれる栄養は時間ともに減少していくので、カット野菜を買った時は早めに調理することが大切です。
関連リンク:
茨城県工業技術センター研究報告 第24号
次亜塩素酸ナトリウムによるカットキャベツの殺菌と日持ちへの影響(PDFファイル)
日本調理科学会 平成 21 年度大会
カットレタスの洗浄方法の違いが栄養成分に及ぼす影響について(PDFファイル)